大家が家賃を値上げする方法と、実際にやってみてわかった「割に合う・合わない」の境界線

不動産投資

「そろそろ家賃を上げてもいいんじゃないか」

大家をしていれば、一度はそう思う瞬間があるはずです。

・相場が上がってきた
・物件にお金をかけた
・金利が上昇してきた ——

理由はさまざまあると思います。

私も1軒目の戸建て賃貸で、5年後の更新タイミングに家賃の値上げ交渉をしました。入居者は快く応じてくれ、5.5万円から5.8万円に引き上げることができました。

ただ、実際にやってみると「思ったより手間もコストもかかる」という現実もありました。

この記事では、現役の戸建て大家3軒の私が、家賃値上げの実体験をもとに「大家として値上げすべきかどうか」の判断基準をお伝えします。

今回の記事でわかること
  • 大家が家賃を値上げしやすいケース
  • 「割に合う」賃上げにするには、いくら値上げしたらよいか
  • 家賃値上げに対する考え方

大家が家賃を値上げできるケースとは

まず前提として、家賃の値上げには「どんな契約か」が大きく関係します。

普通借家契約の場合

一般的な賃貸契約(普通借家)では、大家が一方的に家賃を上げることはできません。値上げするには入居者の合意が必要(基本は、お願いベースだということ)で、拒否された場合は借地借家法に基づいて調停・裁判という手順になります。現実的に、普通借家での値上げは非常にハードルが高いといえます。

定期借家契約の場合

一方、定期借家契約は契約期間が満了すると更新ではなく「再契約」になります。つまり、再契約のタイミングで新しい家賃を提示することができます。入居者に断られれば退去してもらうことになりますが、合意すれば値上げした家賃でそのまま住み続けてもらえます。

値上げ交渉がスムーズにできるのは、基本的にこの定期借家の再契約時です。

私のケース:リースバック物件+定期借家で購入

私が1軒目に購入したのは、リースバックの物件でした。売却主が家を現金化する必要があり、売却後もそのまま住み続けるという契約形態です。売却主が家を売らなければならないというケースだったので、保険として3年の定期借家契約を結びました。

仮に家賃滞納があっても、3年で退去して新たらしい方に住んでもらうことを考えていました。

ありがたいことに、家賃滞納はなかったのですが、やはり初め契約した家賃が安いなと感じていたので3年後の再契約のタイミングで、家賃の値上げを提案することにしました。

実際にどうやって値上げ交渉をしたか

値上げの方法や伝え方で悩む大家は多いと思います。私が実際に行った流れをそのままお伝えします。

タイミング:定期借家の更新から3年後

最初の契約から3年が経ち、再契約の時期を迎えました。契約当初は初めての不動産投資ということもあり、交渉の末、家賃を5.5万円に設定しました。しかし経験を積んでいくうちに、「この立地・この物件なら相場より少し安いかもしれない」と感じるようになっていました。

伝え方:電話で丁寧にお願い

入居者への連絡は電話で行いました。伝えた内容はシンプルで、

「金利が上昇してきたこともあり、家賃を少し上げさせてもらえないでしょうか」

という一言でした。難しい交渉術を使ったわけではなく、ただ率直に、丁寧にお願いしました。

結果:5.5万円→5.8万円で合意

入居者は快く理解を示してくれ、新しい再契約から月5.8万円で住み続けてくれることになりました。月3,000円のアップです。

交渉自体はスムーズで、大きなトラブルもありませんでした。ただ、このあとに「費用対効果の現実」を知ることになります。

値上げして気づいた「費用対効果」の現実

値上げに成功したとはいえ、実際に手元に残るお金の計算をしてみると、思ったよりシビアな現実がありました。

再契約には手数料がかかる

今回の再契約は、物件購入時にお世話になった不動産会社にお願いしました。新しい賃貸借契約書の作成・手続きを依頼したところ、手数料として家賃1ヶ月分(5.8万円)がかかりました。

元を取るのに20ヶ月かかる計算

値上げ額は月3,000円。手数料5.8万円をこの3,000円で割ると——

値上げ幅手数料(1ヶ月分)元を取るまでの期間
月3,000円アップ58,000円約20ヶ月(約1年半)
月5,000円アップ60,000円約12ヶ月
月10,000円アップ70,000円約7ヶ月

月3,000円の値上げでは、元を取るまでに1年8ヶ月かかります。手間や時間的コストを加味すると、数千円程度の値上げは大家にとって「割に合わない」可能性が高いといえます。

大家として値上げを検討するなら、手数料が家賃半年分で回収できるぐらいでないと費用対効果は薄いというのが、私の実感です。

そうなってくると約1万円近く上げないと割に合わない計算です。それはなかなか難しい交渉になってくるでしょう。

値上げ交渉が「うまくいきやすい条件」と「難しい条件」

今回の私のケースはスムーズでしたが、それは条件が整っていたからです。すべての大家が同じようにいくわけではありません。

✅ うまくいきやすい条件

  • 定期借家契約の再契約タイミング
  • 入居者との関係が良好
  • 値上げ幅が小さく、入居者が受け入れやすい金額
  • 地域の家賃相場が上昇している

❌ 難しい条件・注意が必要なケース

  • 普通借家契約で入居中(合意なしに値上げ不可)
  • 入居者が値上げに反発している
  • 値上げ幅が大きく、入居者の負担感が強い
  • 入居者が高齢・収入が少ないなど、事情がある

反応が悪い入居者に値上げをお願いする場合は、交渉の手間・関係悪化のリスク・最悪は退去という事態も覚悟する必要があります。スムーズにいかないケースでは、さらにコストと労力がかかると考えておきましょう。

大家として一番大切なのは「最初の家賃設定」

値上げの経験を経て、私が一番強く感じたことがあります。

それは、最初の賃貸契約で適正な家賃を設定することが、何より大切ということです。

私が1軒目の家賃を5.5万円にしたのは、初めての不動産投資で経験が少なかったからです。自分なりの基準で設定しましたが、経験を積むにつれて「相場より安かった」と気づきました。

もし最初から5.8万円に設定していれば、値上げ交渉も手数料も不要でした。入居者との関係を気まずくするリスクもなく、ただ家賃収入を受け取り続けるだけでよかった。

値上げは「やればできること」ではあります。でも、手間・費用・関係性のリスクを考えると、値上げに頼らなくていい初期設定をすることが、大家として最もコスパのいい判断だと今は思っています。

まとめ:大家が家賃値上げを検討するときのポイント

確認ポイント

・値上げしやすいタイミングは?
 →定期借家の再契約時が最もスムーズ
・交渉の方法は?
 →電話・手紙で理由を添えて丁寧にお願いする
・いくら値上げすれば割に合う?
 →手数料・手間を考えると月10,000円の値上げでないと割に合わない
・値上げがうまくいく条件は?
 →定期借家の更新時
 →入居者との関係が良好なとき
・値上げより大切なことは?
 →最初の賃貸契約で適正家賃を設定すること

家賃値上げは「できないこと」ではありません。ただ、手間・コスト・リスクを正しく理解したうえで判断することが大切です。

これから大家を目指す方・1軒目を購入した方は、ぜひ最初の家賃設定に時間をかけてみてください。そこに手を抜かなければ、値上げに悩む必要はなくなります。

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